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光とアーチが結ぶ、トゥルムの空とモロッコ建築

  • 3 時間前
  • 読了時間: 2分

トゥルムのジャングルに差し込む強い日差し。その光をいかに受け止め、いかに制御するか——「Palma y Arco」は、その問いから始まった建築のように見える。


Palma y Arco


このブティックホテルは、モロッコ建築の構造的語彙を基盤にしながら、トゥルムという土地の気候と文化に応答するかたちで設計されている。単なる意匠の引用ではない。ここで行われているのは、異なる文化圏の空間原理を、光という媒介を通して結び直す試みだ。



アーチという構造、空を切り取る装置


Palma y Arco 室内

“Arco(アーチ)”は、この建築の核となるモチーフである。連続する曲線はファサードや回廊に秩序を与え、同時にトゥルムの空を断片的に切り取るフレームとして機能する。


朝は淡く、昼は鋭く、夕刻には長い影を落とす。その移ろいは壁面に陰影のレイヤーを描き、建築を静的な存在から、時間とともに変化する立体的な装置へと変える。モロッコ建築に見られるアーチのリズムは、ここではより抽象化され、過度な装飾を排した幾何学として再構成されている。その結果、異国趣味ではなく、普遍的な静謐が立ち上がる。



素材と気候の対話


Palma y Arco 室内

壁面の左官仕上げ、テクスチャーを残した石、無垢材、そしてベルベルラグや手仕事のランタン。素材は視覚的アクセントとしてではなく、触覚的なレイヤーとして空間に溶け込む。重要なのは、仕上げの“均質さ”を追い求めない姿勢だ。わずかな揺らぎや手の痕跡が、トゥルムの湿度や熱を受け止め、建築に呼吸を与える。


また動線は内向きに設計されている。中庭や半屋外の回廊を介し、視線は一度内側へと導かれ、そこから再び空へと抜ける。外部の自然を誇示するのではなく、空を構造の中に取り込む設計が徹底されている。



融合ではなく、結節点としての建築


Palma y Arcoが示しているのは、スタイルの“フュージョン”ではない。モロッコ建築とトゥルムの文化は、互いに溶け合うのではなく、光とアーチという共通言語によって接続される。その結果、このホテルはトゥルムに数多く存在するリゾートのひとつではなく、建築的態度を持つ空間として際立つ。ラグジュアリーを誇張するのではなく、抑制と精度によって成立するホスピタリティ。


トゥルムの空の下、モロッコ建築の曲線が影を落とす。その交差点に立ち現れるのは、観光地の記号ではなく、文化を架橋する建築そのものである。

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